アイドルのマーケティング戦略に学ぶ中小企業の戦略とは〜40歳からの仕事を考える〜
購入してなかったタオルとTシャツ!カッコええ!#babymetal
いよいよ来週末に迫ってまいりました、BABYMETAL@幕張メッセ国際展示場です。
ぶち抜きで2万人のモッシュピットはちょっと無謀とも思えますが、多くのメイト(BABYMETALのファン)たちはTwitter上でも海外のファンカム動画を見ながら興奮しまくってます。
ところで、こんな話題がTwitter上でありました。
大阪城ホールとか府立体育館とか
だと出来そうやと思うけど
五月革命の時はBIG CATでやってる
し東京でもTHE-ONE限定だと未だに
O-EASTでやるんやから会場の規模は
関係無いと思います
という内容に対して、僕の方から
東京でしかやらないのはブランディングとかコストの問題もありますからね。海外公演はフェスが中心なので人的コストは抑えられるし、マーケティング的にもプラスになりますけど、国内の地方公演では難しい。
と返信したのですが、ここから少し考えてみることにしました。
かなり私見に偏っているので、いろいろ問題発言や足りない箇所があるかもしれませんが、ご了承ください。
まず自分なりのマーケティング戦略の基本ですが、下記のように考えています。
- 誰に
- どんな価値を
- どのように提供するか
まずは自分が好きなアイドルたちが、この3つの事をどのように展開しているのかを見て行きたいと思います。
Perfume、BABYMETALやさくら学院にみる他アイドルとのマーケティングの違い
多くのアイドルは通常国内のファン層を視野に入れて、数少ないパイを奪い合うことで、今やアイドル戦国時代とよばれるほどアイドルは多種多様化してきました。
巨大勢力48Gにはじまり、モーニング娘。、ももクロ、エビ中、チームしゃちほこといったメジャーどこからT−Paletteのようなアイドル専門レーベルに所属するNegicco、アップアップガールズ、その他地下アイドルと呼ばれる子たち、アイマス、ラブライブといったアニメの中のアイドル、元タカラジェンヌ彩羽真矢のような異色な経歴のアイドルやローカルアイドルまで含めるときりがありません。
そしてそれぞれが真剣に頑張っている姿が美しいと思います。
これら多くのアイドルは先に述べたように基本的なマーケットは国内にあります。
箱の大小を問わずライブをして、イベントを開催し、握手会やチェキ会といった接触イベントも開催し、偶像でありながらも触れて喋れる身近なアイドル、とでもいうのでしょうか?
一部はクールジャパン戦略の流れで、海外へ進出しているグループもいますが、基本的には複数あるアイドルの中の1グループに過ぎません。
また兼任している人も多く、HKTとモモノフ、父兄とモノノフ、メイトとモノノフ、PTAとメイトといったかたちで様々なアイドルを追いかけてメンバーを推している方も多く見受けられます。
それでは、まず3つのアイドルグループの説明から。
Perfumeの掟
そんな中でも異色な活動内容で頭ひとつ飛び出しているのがPerfumeを筆頭とするAmuseのアイドルたちです。
Perfumeの3人は言われずとしれたASH(アクターズスクール広島)出身で、デビュー当時はぱっとしない田舎の女の子でした。
しかし、メジャー直後のエレクトロ3部作と言われる楽曲からヤスタカ節が炸裂し「アイドルなのにカッコイイ」「アイドルなのに踊れる」「アイドルなのにロックを感じる」といった「アイドルなのに◯◯」な存在へと進化し始めました。
そして名曲ポリリズムにおいて大爆発し、一気にブレイク。
現在のポジションを気づきあげました。
〈LIVE〉 Perfume - ポリリズム (Polyrhythm) - YouTube
彼女たちはブレイクするまでの下積み時代が長く、2000年にぱふゅ〜むを結成後、上京、Perfumeへの改名経てブレイクするまで7年近くを要しています。
その間も家電量販店のイベントやApple Storeでのライブイベント、ライブハウスでのイベントなど相当数の場数をこなし、アイドルとしてアーティストとして、見に来てくれたお客さんを絶対自分たちのファンにしてみせるという強い信念のもと、1つ1つのライブをこなしました。
Perfume 引力 - YouTube
Perfume キューティーハニー - YouTube
それはビッグネームとなった現在でも変わらず、初見の人でもPerfumeのステージに感動し、ワンマンライブに参戦させるぐらいの力を持っています。
Perfume JAPAN NIGHT@ 国立競技場 [Special ...
彼女たち3人の圧倒的な歌唱力はその音楽性もあって少し抑え気味ですが、ダンスやステージの演出など、他の追随を許さない、圧倒的なパフォーマンスをみせてくれます。
Perfume - Bigband Medley - YouTube
そのくせ、MCのコーナーでは3人の広島弁混じりのグダグダトークで和み、PTAのコーナーでは体育会系の演出かと思うほど身体を激しく動かし、参戦者を翌日以降筋肉痛のどん底へ叩き落とします。
Perfume ニンジン、タマネギ、ジャガイモ - YouTube
まずは、この圧倒的なパフォーマンスとお客さんを絶対に満足させるという強い信念がPerfumeの強みでもあり掟でもあります。
言葉ではなく、音楽性と身体と世界観で世界のPTAをうならせるパフォーマンスは、国内で何度も辛酸を嘗めてきたPerfumeだからこそ出来るのかもしれません。
目指せスーパーレディ
さくら学院の出自はアミューズのジュニア部門にあります。
アミューズキッズにはいるだけでも非常に狭き門なわけですが、その中でも特にチャオガールグランプリや準グランプリなど、子供向け雑誌のモデルとして活躍する子たちを中心に選抜されたメンバーがさくら学院です。
他のアイドルグループと大きく異なる点は
- 学校をテーマにしたアイドルグループでメンバー数は8〜12人程度
- テレビやメディアへの露出が殆ど無い(今年度から増えるらしい)
- 接触イベントやチェキ会もない(卒業式後の写真集お渡し会はあるが、接触はなし)
- ライブは都内だけ
- 比較的大きなライブは年に数回
- 一切歌を歌わないイベントもある
- ライブでは基本的に席に座ってみる
- どれだけ人気のあるメンバーであっても中学卒業と同時にさくら学院も卒業
- 卒業式に向けて毎年駆け抜けるように時間が流れていく
- メンバーがメンバーを育て、毎年リーダーが変わるので、毎年違うさくら学院が楽しめる
- 卒業生が優秀
武藤彩未 「A.Y.M.」 from SUMMER TRIAL LIVE "20262701 ...
総選挙もありませんし、国立や武道館でのライブが目標ではありません。
自分たちの成長を診てもらうことがさくら学院の真骨頂であり、父兄たちは卒業式の度に感動し、転入式の度にワクワクするのです。
sakura gakuin My Graduation Toss - YouTube
昨年度はBABYMETAとして活躍する菊地最愛と水野由結の卒業もありましたが、人気が衰えるどころか、海外からの父兄が増え、また天才てれびくんでお馴染みの黒澤美澪奈の参加により、世界一カオスなアイドルの現場になりそうです。
Road of Metal Resistance
BABYMETALは先のさくら学院の部活動の一環でしたが、中元すず香卒業に合わせ課外授業となり、現在は完全に独立したものになっています。
BABYMETAL - Road of Resistance - Live in Japan ...
彼女たちは全く国内のマーケットを視野にいれていない、というか海外に目を向けているため、日本でのライブは「日本公演」という名前になっています。
そしてライブは東京のみでせいぜい2daysと、他に会員限定のライブが数回、サマーソニックなどのフェスへの出演が数回程度で、おそらく日本一、世界一会えないアイドルです。
国内公演を絞ることで売上を集約し、その売上をベースに海外公演をまわる。
Perfumeのように大手がスポンサーに付くわけでもなく、3人と神バンドの4人のパフォーマンスを最大限に活かすためには、狭い国内のマーケットだけで広げるのではなく、海外のマーケットを見据えて活動することで、その費用対効果を最大限に活かす戦略が見受けられます。
おそらく地方公演も海外も遠征費用はそうたいして違いはないはずです。
※むしろ地方公演のほうが経費がかかる?
それでも海外へ打って出ているのは、自分たちの圧倒的なパフォーマンスに自身があることと、海外からの逆輸入というかたちでの売り込みのほうが、アイドル戦国時代とかした日本国内で競争するよりも、孤高のアイドルとして遥かに戦略的に売り込みやすいということが考えられます。
また彼女たちの特殊な音楽性も、一般的なアイドル歌謡と大きく異なるため、日本国内ではその演出も含めどうしても色物的な扱いを受けてしまいますが、海外では日本のアイドル的なポジションはないため、彼女たちはメタルグループとしても認知されています。
中小企業のマーケティング戦略
さてここまできて、ようやく本題に入ります。
彼女たちはAmuseという事務所のポジショニングのせいか、アイドルでありながらも妥協のない、アーティスト、アスリートといった側面も十分に含んでいます。
初めは小さなマーケットの中で実験的に動かしながら、タイミングを見計らって一気に勝負に出ていく。
大人数ではなく結束が高い少人数のグループでスタートした後、プロジェクトとして大きく動かすにあたっては高い技術とモチベーションを持ったブレーンを準備し、一気にスターダムへ押し上げていく、そのスピード感は大手の事務所だから出来るというものではありません。
事前にマーケットを地道に調査し、最大の効果を発揮できるポジショニングを作り準備をしていたから、いざというときに動かす力、説得力があったのです。
- 誰に
- どんな価値を
- どのように提供するか
をしっかりと考えることが中小企業にとって一番の課題となります。
ここでもう一度おさらいします。
Perfumeであればコアな音楽ファンに対して、ある種一般ウケしにくいような圧倒的な音楽性とダンスやステージ上の演出による、独自の世界観やPTAのコーナーなどを通した仲間意識によって、幅広く受け入れられるようになりました。
最初期のターゲットこそ一般的なドルヲタでしたが、エレクトロ3部作からポリリズムまでの楽曲については、非常にコアな音楽ファンをターゲットにし、クラブやラジオ、サブカル的な雑誌で評価され、メジャーへのし上がっていきました。
そこには当然彼女たちの人間性も含まれています。
さくら学院の場合は、東京ドームでのライブや武道館、国立でのライブが目的ではなく、彼女たちが目指すのはスーパーレディ。
アイドルを超えた女性としての磨きをかけることにあります。
さくら学院での活動は、彼女たちにとって通過点であり、そこでの経験を踏まえて自分たちの将来進むべき道を模索するのです。
父兄(さくらのファン)に対して、彼女達の成長する姿を、ライブやDVD、CDなどを通して見届けてもらい、卒業式で圧倒的な感動を与えることが目標です。
BABYMETALはたくさん手持ちの楽曲があるわけでもなく、メディアへの露出も極端に低いため、一般的には不利な立場にあるわけですが、その圧倒的なライブパフォーマンスと海外での高い評価もあり、人気はうなぎのぼりです。
全くヘビメタなどに興味もなかった人たちへ、その抜群にカワイイルックスやキレの良いダンスパフォーマンス、非常に高い歌唱力とバックバンドの超絶テクニックで、誰も体験したことのなかった世界観を、限られた場所、限られた人だけに提供する。
また「私達のPerfume」「私達のさくら学院」「私達のBABYMETAL」といった、目の前で駆け上っていくアイドルへの個人の熱い思いがファンが離れられない鍵となっています。
Perfumeを初期の頃から応援していた方は、自分たちの思いをドンドン実現して成長していくPerfumeの姿に共感し、熱いものがこみ上げた人も多くいるはずです。
中小企業にとって大事なのはこれらアイドルと同様、何度も言いますが、
- 誰に
- どんな価値を
- どのように提供するか
にあります。
そして会社ではなく、個人の力が大きくその後を左右することもあるのです。ppnr.hateblo.jp
最後に
だまって口を開けていても誰も見向きもしませんし、興味も持ってくれません。
だれでもいいから仕事ください、というのも戦略的にありえません。
自分たちが一体どこを目指し、お客さんに何を提供できるのか。
技術や素材にこだわることも大事かもしれませんが、それはすぐにコモディティ化してしまい、長続きしません。
大事なことは何をやらないのか、どこへ力を注ぎ込むのか、というところにあります。
お金があるからあれもこれもではなく、自分たちができることやるべきことをずっと深堀りして、とことんまで極めることが重要です。
歌って踊って可愛いだけでは、どのアイドルグループでもいいのです。
誰にも真似のできない圧倒的な価値を提供できるところに、3つのアイドルグープの強みがあります。
しかしそれはお金をかけて作ったものでもセンスでもなく、地道に続けてきた結果が花開いたに過ぎません。
技術がある、いい素材を使っている、安い、短納期で生産できる、そんなものは強みとしては弱すぎます。
自社の強みはなんですか?
圧倒的に他社に優っている箇所はなんですか?
そもそも会社やブランドのコンセプトはなんですか?
よそがやっているから同じ方程式でやれば売れる、のではなく自分たちにしかできない何かを探し、お客さまへ届けることが一番需要な鍵となります。
会社が手を貸してくれないのであれば、もしそれを正しいと信じるなら、自分たちだけで考えてみるべきです。
自己啓発書や仕組みづくりも大事かもしれませんが、そこで満足してしまうことも多く、そうなるとそれ以上の発想は生まれません。
全く関係のない世界を覗くことが新しいビジネスのヒントに繋がることだってあります。
大事なのは、何度も言いますが、
- 誰に
- どんな価値を
- どのように提供するか
にあります。
自分たちの手持ちのカードを見つめなおし、自分たちだけのメッセージを伝えられる戦略を考えましょう。